雨上がりの虹のむこうに
 ひとつだけ。

 叶うことなら、お父さんとお母さんを生き返えらせて欲しい。


 でもそれは人間の出来ることじゃない……

 それなら……私は思いきってお願いを口にすることにした。


「私にこの建物を譲って下さい。今すぐとは言いません…私が大人になって買い取れるだけの用意が出来るまで、この建物を誰にも譲ったりしないで欲しいのです」

「この建物が欲しいとは言わないのだね。それでも私は構わないのだよ」

 すっと会長の目が細められる。それくらいのことを叶えられないのかと心外に思ったのかもしれない。

「……私はもう十分に皆さんから優しさを頂いていますから、これ以上は贅沢です。隼人さんや丸山さんにもお世話になって、これ以上会長にまでもなんて……」

 ふっと会長の口元に笑みが浮く。

「そうだな。あの孝雄と由佳里の娘だものな。頑固でない訳がない。

良かろう。皆藤権造の名前にかけて約束は違えることなく守られるだろう」




 そうしてお父さんとお母さんを亡くした私には、いつか大使館を買い取るという夢が出来た。














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