雨上がりの虹のむこうに
 もっとじっくり見たいという欲望が胸を焦がす。そこには初対面だとかプライベートでは内向的な自分を忘れる程の欲で、自分にあったそうした欲求にくらりと視界が狭くなる。

 意外だった。何かに執着するなど、とても大切な思い出を守るための行動以外ではおこることのなかった感情だった。

 まくられていくスピードが落ちたのは、資料の最後にあった人物写真になってからだった。セピア色の写真を見て初めてオーナーが山並さんを見た。


「これはどういった経緯で撮られたものなのでしょうか」

「それについては友人のプライベートポートレートになりますが、許可を得ています。式をあげることがなかったので、記念にせめて写真だけと無理矢理撮らされたものです」

 よくよく見れば写真撮影のために整えられた背景ではなく、借り物であろうシンプルなドレスで写真に収まっている。
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