雨上がりの虹のむこうに
 ただその瞳はお互いを映して尊重しているようで、とても素敵なご夫婦だと感じられた。


「はつきりと言ってしまえば、この友人というのがバカで危険を伴う仕事を辞められず、彼女の側の親族に結婚の許可がもらえなかったといった経緯があるんです。でも……」

 
 そこで山並さんは言い淀むように口をつぐむものの、視線を合わせたオーナーが先を促すように首を傾げたので声をしぼりだした。


「とても…自然に撮影出来たんです。お互いがそこにいることがとても自然で、まとっている空気が似ているんでしょう。……だからこの写真については自分の力量を計るものとしては未熟かもしれません……何分、モデルが良すぎた」


 山並さんの顔がくしゃりと歪む。たとえモデルがよかったからといっても、その場所をその空気を壊すことなく焼き付けているのは山並さんの確かな腕でしかない。


「オーナー私からもお願いします。見ていただいた写真以上のものをきっと山並さんは撮影出来るようになります。今はまだ納得がいかなかったとしても、必ず」


 首だけ後ろに向けたオーナーは意地の悪い笑みを浮かべている。


「何も僕は採用しないとは言っていないよ。まずは試用期間をもうけた後に、正式な採用としよう。詳しくは店長を通して連絡するので、連絡先はこの名刺のものでいいね」
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