雨上がりの虹のむこうに


「これは私が花屋だから言えることです。一輪のピンクのバラは『かわいい人一目惚れしました』という意味になります。ピンクのバラにかわいい人という意味があって、一輪ということで一目惚れという意味です。

 赤いバラの意味が情熱だというのは有名かもしれませんが、贈る本数でも意味をもたせることができますよ」


 あの、口下手な人がそんなことを知っていて、実行してしまうなんて。かあっと全身が熱くなる。


「言えないから何も考えていないということではないですから。きちんと考えて贈ってくれたんでしょうね。相手が気付くとか気付かないではなく、気持ちを形にすることも大切なことです」


 繊細な花びらをなぞるように愛でてから沙那さんは、バラを返してくれた。


「私も優子さんは山並さんにとって大切な女性だと思います。こんなに細やかな愛情を持った人はそういないですよ」

「……そうね。きっと……」


 不器用そうに見えたのは、相手に合わせようとして自分を殺しているからだ。常に相手のことばかりで、自分の気持ちさえもこんなに隠してしまう。
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