もしも緑間くんと恋をしたら
芝生公園に着き、ベンチを探した。
施設は整っていて、お弁当を広げられるほどのテーブルとベンチは所々にあった。

日曜日という事だけあって、家族連れでスポーツを楽しむ光景が広がる。

「ねぇ!あそこに座ろう?」

「あぁ、そうだな」

座るベンチを決めて、彼と二人で腰を掛けた。
向かい側でなく、隣りに座った。
私は彼の横顔が特に好きだ。
それをよく観察できるから、隣りに座った。

「どうぞ!」

色とりどりに詰め込んだお弁当を見て、緑間くんは一瞬手を止めた。

「どうしたの?」

「お前、これ全部手作りなのか?」

「そうだよ?」

「すごいな……」

そう関心し、彼は箸を持った。
お腹空いてたのかな。
結構、美味しそうに食べてくれている。

「緑間くん、デートってしたことあるの?」

「無いに決まっているだろう、馬鹿め」

「どうして私とデートしてくれたの?」

「デートなんて誘われたことがないからしたことがなかっただけなのだよ」

「じゃあ、別の人でもしてた?」

お弁当を突付きながら、私はストレートに彼に訊きたいことをぶつけまくった。

「それは分からない……」

緑間くんはまた目をそらして、眼鏡を左手で押し上げた。

「私もデート初めてなんだ」

「……そうなのか」

「誘ったのも初めて」

「…………」

緑間くんがこちらを見てくれた。
その瞳は真っ直ぐで、ピクリとも動かない。

「緑間くんのこと、もっと知りたい」

顔が熱い。絶対に顔が赤くなっている。
頭から湯気が出てしまいそうだ。

「……何を言っているのだよ……」

緑間くんの真っ直ぐでピクリともしなかった顔が、赤く染まっていく。

「その……意味わかる?」

私がそう訊くと、緑間くんは持っていた箸を置いた。

「多分、理解しているのだよ。これがどういうことで、お前が何が言いたいのか理解しているのだよ」

「……うん」

「……慣れていないのだよ」

「慣れるまで待てば良い?慣れるまで今日みたいなことしてもいい?」

箸を置いた彼と、真っ直ぐに目線を合わせる。

「……最近、お前のことが頭から離れないのだよ」

緑間くんはそういった後、照れくさそうに目線をそらした。

「なんだー、同じだったんだね」

私はほっと胸を撫で下ろした。
その様子をきょとんとした顔して、彼は見つめる。

「私も緑間くんのことが、頭から離れないの。これって……好きってことなのかな?」

「……好きってもの以外に何があるのだよ、馬鹿め」

そうして、私たちはお互い気になっている存在であることを打ち明けた。
中学生だし、受験も控えている。そういうのも含めて、付き合うとかそういう話にはならなかったけど、お互い意識していることは伝わった。
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