もしも緑間くんと恋をしたら
翌日、私は予定通りお弁当をつめた。
空は快晴。デート日和とはこのこと。
十時に緑間くんが迎えに来るなんて、ワクワクして落ち着いていられない。
幸い、お父さんとお母さんはせっかくの休みだからゆっくり寝ている。
こんなソワソワしている自分を見られるのは、親といえど恥ずかしいから。
―ピンポーン
(あっ、来た!)
ドキドキと高鳴る胸をおさえ、そこそこおしゃれな靴を履き、玄関を開けた。
目の前には左手で眼鏡を上げて、恥ずかしそうに、目をそらす緑間くんがいた。
シャツにカーディガンを羽織り、パンツはスマートな形。
「お、おはよ」
(カッコイイ……)
私も恥ずかしくてたまらなかった。
偶然、私もシャツにカーディガン、ジーンズ生地の膝丈のスカート。
「おはようなのだよ」
私は玄関を閉め、鍵を回した。
待ってくれている緑間くんの隣に行き、いっしょに歩き始めた。
「緑間くんのオススメの雑貨屋とかあるの?」
「あぁ。そこに行こうと思っているのだよ」
「そうなの?」
「俺も欲しい物があるのだよ」
「もしかしてタイミング良かった?」
「まぁ、そうかもしれない。悪くはないのだよ」
緑間くんは、一切こちらを見ようとしないけど、それでもドキドキしていた。
隣を歩くことが、それだけで特別な気になれて嬉しかった。
「それより、それ、何なのだよ」
私がお弁当を二個持っていることに気付いた様子だった。
「お弁当だよ?」
「お、お弁当……?」
「お昼、公園でお弁当食べようと思って」
さすがに、緑間くんもこちらを見てくれた。ちょっと照れてる感じがする。
「お、お昼どこにしようか悩んでいたのだよ。全く……そういうことは先に言うのだよ。次からはそうしてくれなきゃ困る」
緑間くんはそう言って、眼鏡の隙間から見下ろしてきた。
「ごめんなさい……」
「謝る必要はないのだよ。あとで有難く頂くのだよ」
「うん、ありがとう!」
「ありがとうはこっちのセリフなのだよ。馬鹿め」
そうしているうちに、緑間くんのオススメの雑貨屋に着いた。
「緑間くんの欲しい物って?」
私が尋ねると、緑間くんは無言で奥の方に入っていた。
ずっと奥の棚に並べられている陶器の置物。
「これ?」
「あぁ、これなのだよ」
それは狸の置物……。
「どうして?」
「ラッキーアイテムの調達なのだよ」
あぁ、なるほど。
すっかり私は納得させられていた。
これって!彼がおは朝のラッキーアイテムをチェックしてるなんて知らなかったらどうなっていたのだろう。
「斉藤の欲しい物は?」
私は小物のコーナーを探し、そこに立ち止まった。
可愛らしいリップクリームと、手鏡を手に取り緑間くんにこれだよ、と見せた。
「リップクリームか。はやり女の子はこういうものを欲しがるのか?」
緑間くんは不思議そうに尋ねてきた。
「そうだね。カサカサの唇にキスしたいなんて思わないでしょ?」
と、私は何も考えず素直に答えた。
「き、キス?!それって、え、そ、そうか。そういうことなのか」
全然動揺を隠せてないけど、ウブな彼には衝撃的な事だったかな。
「どうしたの?おかしいよ、緑間くん!」
クスクス笑う私を見て、うるさいのだよ、と眼鏡を上げるフリして緑間くんは誤魔化していた。
「緑間くん、これももらって」
お会計を済ませたあと、一緒に買ったバスケットボールのキーホルダーを渡した。
「何なのだよ」
「ダメだよ、ロッカーの鍵に麻雀牌なんてつけちゃ」
「な、なんでそれを?!」
緑間くんが慌てている。
知られたくなかったのかな。
一々反応が面白いから、からかいたくなる。
「バレバレだよ、もうっ」
「うるさいのだよ」
もう何度言われてるのだろう。
うるさいのだよ。
照れ隠しの時に使うというのは、もう分かってしまった。あと、馬鹿め、も。
「だから、これ付けといて!ね?」
「ふん、馬鹿め」
「本当、ツンデレなんだから」
私は、どんどん彼といることに慣れてきた。会話の進め方も彼をからかう方法も。
「緑間くん、どんな人が好きなの?」
雑貨屋を出て、公園に向かう最中で私は彼の横顔に問うた。
「な、何を聞いてくるのだよ、お前は」
もう斉藤じゃなくて、彼は私をお前と言った。これって聞き手側の私からしたら、距離が縮まったような気がする。
「気になるから訊いたの。ダメ?」
「……年上がタイプなのだよ」
意外な返事に私は、驚きを隠せなかった。
「じゃあ、同い年は好きじゃない?」
年上と言われてしまえば、どうあがいてもその条件に私は満たない。
「……そういうわけではないのだよ。年上の方が楽だからと思っているだけなのだよ」
そうか。ということは、彼がなぜ年上と言ったのか、意味さえ分かればいいってことか。
うーん……難しい……。
空は快晴。デート日和とはこのこと。
十時に緑間くんが迎えに来るなんて、ワクワクして落ち着いていられない。
幸い、お父さんとお母さんはせっかくの休みだからゆっくり寝ている。
こんなソワソワしている自分を見られるのは、親といえど恥ずかしいから。
―ピンポーン
(あっ、来た!)
ドキドキと高鳴る胸をおさえ、そこそこおしゃれな靴を履き、玄関を開けた。
目の前には左手で眼鏡を上げて、恥ずかしそうに、目をそらす緑間くんがいた。
シャツにカーディガンを羽織り、パンツはスマートな形。
「お、おはよ」
(カッコイイ……)
私も恥ずかしくてたまらなかった。
偶然、私もシャツにカーディガン、ジーンズ生地の膝丈のスカート。
「おはようなのだよ」
私は玄関を閉め、鍵を回した。
待ってくれている緑間くんの隣に行き、いっしょに歩き始めた。
「緑間くんのオススメの雑貨屋とかあるの?」
「あぁ。そこに行こうと思っているのだよ」
「そうなの?」
「俺も欲しい物があるのだよ」
「もしかしてタイミング良かった?」
「まぁ、そうかもしれない。悪くはないのだよ」
緑間くんは、一切こちらを見ようとしないけど、それでもドキドキしていた。
隣を歩くことが、それだけで特別な気になれて嬉しかった。
「それより、それ、何なのだよ」
私がお弁当を二個持っていることに気付いた様子だった。
「お弁当だよ?」
「お、お弁当……?」
「お昼、公園でお弁当食べようと思って」
さすがに、緑間くんもこちらを見てくれた。ちょっと照れてる感じがする。
「お、お昼どこにしようか悩んでいたのだよ。全く……そういうことは先に言うのだよ。次からはそうしてくれなきゃ困る」
緑間くんはそう言って、眼鏡の隙間から見下ろしてきた。
「ごめんなさい……」
「謝る必要はないのだよ。あとで有難く頂くのだよ」
「うん、ありがとう!」
「ありがとうはこっちのセリフなのだよ。馬鹿め」
そうしているうちに、緑間くんのオススメの雑貨屋に着いた。
「緑間くんの欲しい物って?」
私が尋ねると、緑間くんは無言で奥の方に入っていた。
ずっと奥の棚に並べられている陶器の置物。
「これ?」
「あぁ、これなのだよ」
それは狸の置物……。
「どうして?」
「ラッキーアイテムの調達なのだよ」
あぁ、なるほど。
すっかり私は納得させられていた。
これって!彼がおは朝のラッキーアイテムをチェックしてるなんて知らなかったらどうなっていたのだろう。
「斉藤の欲しい物は?」
私は小物のコーナーを探し、そこに立ち止まった。
可愛らしいリップクリームと、手鏡を手に取り緑間くんにこれだよ、と見せた。
「リップクリームか。はやり女の子はこういうものを欲しがるのか?」
緑間くんは不思議そうに尋ねてきた。
「そうだね。カサカサの唇にキスしたいなんて思わないでしょ?」
と、私は何も考えず素直に答えた。
「き、キス?!それって、え、そ、そうか。そういうことなのか」
全然動揺を隠せてないけど、ウブな彼には衝撃的な事だったかな。
「どうしたの?おかしいよ、緑間くん!」
クスクス笑う私を見て、うるさいのだよ、と眼鏡を上げるフリして緑間くんは誤魔化していた。
「緑間くん、これももらって」
お会計を済ませたあと、一緒に買ったバスケットボールのキーホルダーを渡した。
「何なのだよ」
「ダメだよ、ロッカーの鍵に麻雀牌なんてつけちゃ」
「な、なんでそれを?!」
緑間くんが慌てている。
知られたくなかったのかな。
一々反応が面白いから、からかいたくなる。
「バレバレだよ、もうっ」
「うるさいのだよ」
もう何度言われてるのだろう。
うるさいのだよ。
照れ隠しの時に使うというのは、もう分かってしまった。あと、馬鹿め、も。
「だから、これ付けといて!ね?」
「ふん、馬鹿め」
「本当、ツンデレなんだから」
私は、どんどん彼といることに慣れてきた。会話の進め方も彼をからかう方法も。
「緑間くん、どんな人が好きなの?」
雑貨屋を出て、公園に向かう最中で私は彼の横顔に問うた。
「な、何を聞いてくるのだよ、お前は」
もう斉藤じゃなくて、彼は私をお前と言った。これって聞き手側の私からしたら、距離が縮まったような気がする。
「気になるから訊いたの。ダメ?」
「……年上がタイプなのだよ」
意外な返事に私は、驚きを隠せなかった。
「じゃあ、同い年は好きじゃない?」
年上と言われてしまえば、どうあがいてもその条件に私は満たない。
「……そういうわけではないのだよ。年上の方が楽だからと思っているだけなのだよ」
そうか。ということは、彼がなぜ年上と言ったのか、意味さえ分かればいいってことか。
うーん……難しい……。