もしも緑間くんと恋をしたら
緑間くんは私の腕を引き、思いっきり抱き締めてくれた。苦しいくらいに。

「く、苦しいよ……」

「あぁ、すまない」

緑間くんの力は緩んだけど、まだ腕の中にいた。

「緑間くん……?」

腕の中から、彼の名を呼んだ。

「恋愛感情などとは、厄介なものなのだよ」

「……そうだね」

「離れたくないと思っている」

「……うん」

「俺は、嫉妬深いのかもしれない」

「それはさっき分かった」

いつ離してくれるのか、どんどん疑問に思えてきたが、緑間くんは離してくれそうにない。

「斉藤……」

「……ん?」

しばらくの沈黙のあと、緑間くんがようやく体を離してくれた。
怖いくらいに目と目を合わせ、緑間くんはそらすことなかった。

その顔は少しずつ近づいて来て、息すら当たる距離だ。

私の肩に手を置いた緑間くんが、まだ震えているのが分かった。これは緊張だ。

私は目を閉じて、自分の唇を閉じ、緑間くんの迫り来る唇に応えた。

「緑間くん……」

「そんな顔でこっちを見るな。恥ずかしいのだよ」

緑間くんは急に、顔を真っ赤にして目を泳がせた。動揺してるのがバレバレ。
相変わらず、彼の反応はおもしろい。

「もう一回して?」

「な、何を言っているのだよ!そういうのは何度もするものじゃないのだよ」

まるで紫原くんのことなんて忘れたみたいに、緑間くんの機嫌は直ってくれた。

黒子くんが、背中を押してくれたおかげかもしれない。
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