もしも緑間くんと恋をしたら
そのあと、緑間くんはテーピングまみれで、すまないと言いながら、私の手を握り、家まで送ってくれた。

「緑間くん、ありがとう。またね」

そう言って、彼に、手を振った。だけど、握られた手は放されずしばらくそのままだった。

「ん?緑間くん?」

私は突っ立ったままの彼の顔を覗き込んだ。

「うるさいのだよ」

(何も言ってないけど……)

「また明日、会えるから」

「分かっているのだよ、馬鹿め」

そういうと渋々、私の手を離してくれた。
緑間くんは意外と甘えたいタイプなのかもしれない。でも、恥ずかしくて出来ない。そんな感じかな……。

「好きだよ」

照れる緑間くんに、私はにっこり笑った。

「そう何度も言うものじゃないのだよ、まったく」

「そうだね、ふふっ」

じゃあ、また。
そう言って彼と離れた。

少し歩いては振り返り、また少し歩いては振り返り。
角を曲がって見えなくなるまで、彼は何度も振り返り、私のことを気にしてくれた。
そんな彼が、見えなくなるまで、私も手を振り続けた。

初めての両想い。
初キスにはならなかったけど、緑間くんが重ねてくれた唇は今も余韻のあるままだ。

恋人って正式に言われたわけじゃないけど、これってそういう関係だと思ってもいいのかなぁ……。
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