もしも緑間くんと恋をしたら
「ちぇっ。いいよー。しばらくは斉ちんのことは見守る。でも、みどちんが傷付けたときは容赦なく奪いに行くから」

紫原くんはようやく分かってくれたようだった。

「……ありがとう」

そうして、彼との通話は終わった。
私のお菓子……そんなに気に入ってくれたのかな。
普通のカップケーキとクッキーだったんだけど。
さつきは料理が下手だからなー。
物珍しかったのかもしれない。

このまま穏便に、彼は私を忘れてくれればいい。
贅沢にも、そう願った。

私は、彼との通話のあと、無性に緑間くんに会いたくなって彼に電話をした。

呼び出し音が数秒続く……。

「もしもし」

携帯電話から聞こえる、緑間くんの声にホッとした。

「緑間くん、部活お疲れ様。もう家?」

「いや、今から帰るところなのだよ」

紫原くんが先に帰っただけで、緑間くんはまだ練習していたらしい。

「そっか。よかった。ちょっとでいいから、会いに行ってもいい?」

私は五分でも十分でも会いたくて、彼にそう伝えた。

「……お前は本当に馬鹿なのだよ」

「……ごめん……」

「家まで行くのだよ」

「え?」

「もう暗いんだぞ。危ないのだよ」

「……ごめん」

「あと五分で着く。出てきてくれてると有難いのだよ。門からはでるなよ?」

「分かった」

電話を切ったあと、私は玄関を出て自分の家の門の中で彼を待っていた。

過保護というか、心配症というか。
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