もしも緑間くんと恋をしたら
しばらくして、緑間くんは家の前に現れた。

「ごめん、ありがとう」

私は門を開け、彼のそばに近付いた。

「雰囲気が違うと思ったら、髪か……」

いつもは束ねている髪をおろしていたからだ。
それに今日は、アイロンで軽く巻いたせいで、ちょっと雰囲気が違ったように見えたのだ。

「あ、これね。いつもは結ってるしね」

「こっちの方が大人っぽくて良いな」

「そう?」

「いや、やっぱどっちでもいい……」

「何それ!」

私が笑うといつも彼は、はにかむ。
その顔が可愛くて好き。

「ちょっと歩いてもいい?」

私は家の前で話すことに抵抗を感じ、そう言った。

「構わないが、良いのか?時間とか……」

「今日は両親二人とも残業みたい。だから、まだ大丈夫だよ」

そういうと彼は納得してくれた。
玄関に鍵をし、再び彼の隣に立った。

さり気なく手を引かれ、見慣れた街を歩き出す。

「どうしたのだ。急に電話なんてかけてきて」

「紫原くんから電話があったの。でも、私は緑間くんが大事だって言い切ったの。やっと納得してくれて……そしたら会いたくなって」

「紫原が……」

「うん。でも、もうちゃんと断ったから大丈夫だよ」

「そうなのか」

「緑間くん……私ね、本当に知らないところで名前を知られて存在を知られてたんだね。紫原くんにもあなたにも」

「そうらしいな」

「紫原くん、私がさつきにあげたお菓子を食べたのがきっかけで私を知ってくれてたらしくて……まったく身に覚えのないところから発展するもんなんだね」

「なるほど」

「そういうことを教えてくれたけど……私は緑間くんが良いってそう伝えたよ」

「何度も言うな。恥ずかしいのだよ」

「言いたいんだもん」

「言いたくても、十分伝わってるのだよ」

「……うーん」

ちょっと頬を膨らまし、拗ねたような顔をすると、緑間くんは右手で私の顔を軽く抑えた。

「そういう顔もやめるのだよ」

そして、そう言うとすぐに手を退けてくれた。

「……?」

「……可愛い……からやめるのだよ」

緑間くんは、最初の頃に比べると少しずつ褒めてくれたり、想いを伝えてくれたりしている。そんな彼と上手く行かないなんていうビジョンは、今は見えそうにない。

「緑間くんってば、そんなこと言うんだね」

私は嬉しくて、緑間くんの腕に自分の両腕を絡めた。

「はしゃぐな!馬鹿め!」

そうやって、彼と戯れるのも、本当に幸せに思えた。
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