櫻~再会の願い~
-prologue-
ひらひら ひらひら
桜が舞っていた
うっすらと白く 淡いピンク色をした綺麗な花びらたち
雪のように降る桜の向こうに 私は見覚えのある人影を見つける
ずっと会いたかった彼女
だけど その姿は桜に暈され どんどん遠ざかってしまう
呼び止めたいのに その叫びが声にならない
追いかけたいのに 地面に縫いつけられてしまったように足が動かない
お願い 待って!
行かないで!
――ざあっ
桜が吹雪のように吹きつける
視界が花びらに覆われて何も見えなくなって――
「千紗都(ちさと)……!!」
そう叫んで、目が覚めた。
自分の乱れた呼吸の音が部屋に響く。
心臓の鼓動もうるさいくらい激しく、身体は汗でびっしょりだった。
伸ばした手から力が抜けていく。
じわりと視界が滲んだ。
あとからあとから溢れて、止まらない涙。
――分かってる
もう千紗都には二度と会えないってこと――
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