2番目の唇

「諦めたか」

メールを送った後でもまだ鳴り続けているようなら、さすがに出てもいいかなと思っていたんだけど。

そんな人の悪いことを考える私は、この6年の間に少し性格が曲がってしまったのかもしれない。


ここはシステム管理部。

私の所属するこの部署は、太陽の光が燦々と降り注ぐガラス張りの吹き抜けロビーのすぐ下にある日当たりの悪い地下にある。

出入りする社員は、ほぼフレックス勤務。

とは言っても、それは働く時間が短いというわけではなく。
ただ単に夜の作業が多いという類のものだ。

現に今日も、入社時に明示された時間を過ぎたこの時間になってもせっせと働く社員がいる、他部署とは少し時間のズレた部署。


この部署に配属されて4年目。

私もこのくらいの残業は当たり前の、仕事ばかりの生活に慣れてしまっていた。


さっきのメールがきちんと【送信済みBOX 】に入ったことを確認して、私は静かになった電話の受話器を取る。


「お疲れ様です。沢田です」
「おー、おつかれー」

間延びした声で答えるのは、夕方から上階のサーバー室で仕事中の上司、葛西だ。


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