会社で恋しちゃダメですか?


何度も角度を変えて、唇を合わせた。
山科の大きな手が、園子の両頬をはさむ。彼の体温が耳の後ろから伝わって、感じたことのないような感覚が押し寄せた。


あたまがくらくらする。
園子の口から溜息のような息が漏れた。


山科が園子を引き上げるように、腰に腕を回してもちあげる。園子は中腰なると、山科の腕にぎゅうっとつかまった。


山科が身体を強く抱きしめる。


最初は軽く触れるだけだった唇が、やがてどん欲になっていく。園子はめまいがして、更に一層強く、山科にしがみついた。ぎこちなく開いた唇に山科が入ってくると、園子はその柔らかな感触に溺れそうになった。


「ま、待って……くだ……」
園子はパニックになって、そう声に出す。


「なに?」
山科が唇をはなして、ささやくように問うた。


「あの……くるしくて、息が」
園子は上気した頬で、必死に伝えた。「息継ぎできないんです」


山科が目を丸くして、園子を見つめる。


それから突然笑い出した。
園子の身体をいたわるように抱きしめて、髪の毛を弄ぶ。


「ごめん、先走りすぎた」
「はあ……」
全身が心臓になったかのようだ。胸のどきどきが耳の中で響いてる。


山科が園子の耳に唇をつける。それだけで園子は気を失いそうになる。


「きみが好きなんだ」
そう言った。

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