会社で恋しちゃダメですか?
園子は自分のデスクに戻ると、椅子に座って胸を押さえる。
「あきらめられない」
山科の言葉が耳に残っている。
どんな結末が待っていようとも、彼が望むなら側にいよう。たとえ社長にひどく反対されても、側にいたいと訴えよう。園子はそう決心した。
「やーん、園子。こっちがドキドキしちゃった」
紀子が椅子をころころと転がしながら、側によって来た。「部長、めちゃくちゃ潔くて、かっこよかったー。惚れちゃったよお」
園子は照れて、顔を赤らめた。
「朋生、なにふてくされてんの?」
むっつりとした朋生に向かって、紀子がからかうように声をかけた。
「うるせー。完敗だなって思ってただけだよ」
「そもそも勝てるチャンスがあるとでも思ってたの?」
「紀子、おめー、もうちょっと配慮しろよ」
朋生が言うと、紀子は再び椅子をコロコロしながら、朋生の側へ回って行く。
「朋生のイイところ、わたしはよく知ってるからさ。安心しなって」
「くそぉ」
朋生が紀子のお腹あたりに軽いパンチを繰り出す。
「愚痴なら聞くから、今夜飲みにいこ」
「お前が先につぶれんなよ」
「まかしときなって」
紀子が笑う。
そんな二人を見ながら、園子は思う。
やっぱり紀子は朋生のことが好きなんじゃないのかな。
園子はほっとして、安堵の笑みがこぼれた。