会社で恋しちゃダメですか?
十年ローンでお願いします。
園子は冷や汗が止まらない。
連れて行かれたショップは、園子が踏み入ったことのないような場所。ショーウィンドウから見るだけの世界。
ビルの一階から三階までが、すべてファッションフロア。クリーム色の店内に、色とりどりのふわふわのドレス。華奢なパンプス。そっと値札をめくって、叫びそうになった。
ドレスに三十万とか……あり得ない。
「山科です」
「おまちしておりました」
四十近い女性店員が、スマートな物腰で頭を下げる。
「僕のスーツ、できてますか?」
「はい、もちろんです」
「それで、この子なんだけど」
山科が萎縮する園子の肩を抱いて、店員に引き渡した。
「今日のパレードに連れて行きたいんです。彼女に似合うドレスと靴、それからアクセサリーを見立ててもらえませんか?」
店員は園子の頭からつま先までじっくりと見る。それからにっこりと笑うと「お任せください」と言った。
「いってらっしゃい」
山科はそう言うと、園子に向かって笑顔で手を振る。
「えっ、えっ、えええええー」
園子はされるがまま、あっという間に店員に連れて行かれてしまった。