会社で恋しちゃダメですか?
ビルの脇には、いつのまにか黒塗りの車がとまっている。夕暮れ近くの銀座。オレンジ色の夕焼けが、ビルの間を照らしている。歩行者天国の人々が、いつのまにか規制されていた。
「今日はなにがあるんですか?」
バランスを取りながら、園子は訊ねる。
「大銀座まつり。知らない?」
「知りません」
「パレードがあるんだよ。TSUBAKIの一部の社員と家族のために、そのパレードを見るためのパーティがあるんだ。一人で行くのは気が引けて、池山さんにお願いしたんだ」
それを聞いて、園子の緊張度は一気にあがった。自分はあまりにも場違いのような気がする。
山科にエスコートされて、園子は車に乗り込んだ。裾を少しもちあげて、かかとにひっかからないように気をつける。車は普通のタクシーとは少し違う。なんだか全部が高級だ。なにせ、運転手が、黒いスーツをきている。
裏通りを通り、五分ほど。すぐに目的地に到着した。
「このくらいなら、歩いても」
園子は車を降りながら、山科に言った。
「その靴じゃ、大変だと思うよ」
山科はそう言うと、園子に腕を差し出した。
「どうぞ。腕につかまって」
園子はそう言われて、少し躊躇する。
「いいから。ころんじゃうよ」
山科が笑いながら、反対の手で園子の手を優しくひっぱり、自分の腕につかまらせた。なんだか、自分が特別に扱われているみたいで、園子はどうしたらいいのかわからなかった。
大通りに面した茶色いビルの入り口に向かう。
「ここは?」
「TSUBAKI が経営するレストランだよ」
「あっ、あの有名な?」
園子はテレビのグルメ特集を思い出した。季節のパルフェなるものを見て、とっても上品でおいしそうだったけれど、コーヒーが一杯千円もすると聞いて、来るのはあきらめた。
確かに、入りづらい、高級感。