海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 皆が無事を確認しないで、そのままになんてできなかった。


 海のなかで、流れる血を止めるのは難しい。


 貧血を起こし、意識をもって行かれそうになりながら、それでも。


 なんとか目を覚ましたまま、海面に浮かんだシーヴルと、エタンセルに合流した時だった。



 ズガーーーンッ!



 突然ものすごい音がして、わたし達は全員驚いて振り返った。


 すると、そこには。


 いつの間にか新たな船が、来ていたんだ。


 それは、ただ一隻だったけれども。


 波を蹴立て、火薬の大砲を散々と打ち鳴らしながら、紅の自由号と、海賊船の混乱の中にやって来た船は、今までに見たことのないほど大きい四本マスト仕立て。


 装飾も豪華で海上に建てられた宮殿のように立派なくせに、船足がめちゃくちゃに速い、異国の船だ。


 世界を福包国と二分する大国『シアンス王国』の旗を掲げ。


 船首に書いてある船名プレートには、世界公用語で『疾風号』と書いている。
< 19 / 31 >

この作品をシェア

pagetop