海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 その名前を確認した時だった。


 疾風号からドドドッと大砲の威嚇射撃が海を引き裂き、水柱が盛大に上がったかと思うと『双方、動くな!』と大音響が響き渡った。


 どうやら、火薬を大量に積んでいるくせに、魔法か何かで、音の拡張をしているらしい。


 あり得ない状況に、驚いてみれば、大音響は更に言葉を続けた。


『私は疾風(クー・ド・ヴァン)号船長、クードである!
 この争いは、私が預かる!
 両船の船長、及び責任者は武装を解除し、疾風号に出頭せよ。
 抵抗は認めない!
 抗う船は、その場で沈むことになる……!』


「ははは~~しゃらくせえ!
 オレらの戦いに、途中で、首を挟むんじゃねえや!」


 パン、パンッ!


 疾風号の呼びかけに、どこからか取り出したマスケット銃で答えた敵の海賊船の男が、疾風号めがけて撃った時だった。



 ズガーン


 なんて音を立て疾風号から、大砲が一発『お返し』とばかりに飛んで行き……


 側にいたヒトビトを巻き込みながら、敵の海賊船の一部が、めきょっと曲がって大破した。


「ウソだろ……」


 そのめちゃくちやな様子に、ジーヴルが呆然とつぶやき、エタンセルが口笛を吹いた。


『それで、紅の自由号は、どうなんだ?
 そちらの答えを聞こうか?』


 疾風号、クード船長の声に、わたしを抱きしめているアヴェルスの手に、ぎゅっと力がこもった。













 
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