旅立ちの日
タビダチノヒ
オレは帰郷の準備に余念がない。
去年の夏休みは何も計画を立てず
ぼーっと過ごしてしまった。
今年は田舎へ帰るぞと
意気込みいっぱいだ。

秋田へは新幹線で帰るか
それとも夜行バスにするか。

親は元気か、電話やメールも
照れくさくてしていない。
妹に子供が生まれて
オレに似ているなんて笑える。

おみやげは何にしよう。
東京の名物ってなんだ?
なんていろいろ考えながら。

大好きなカリカリ梅も忘れずに
持っていこう。



久しぶりに部屋の大掃除をした。
今回はとにかくモノを捨てる!
たまりにたまった雑誌
名の知れないフィギュア
このフロッピーもいらないな。
あれもこれもと捨てていると
この部屋の中で
一番不要なものは
じつは自分自身じゃないかと思えた…。

45リットルのゴミ袋が4つ
満タンになった。
部屋は引越し当時のようにすっきりした


その夜、夜行バスに乗った。
10時間ほどで秋田に着く。
バスに乗り込み、ほどなくして眠りについた。





朝。



「お客さん!お客さん!」

と運転手が揺すって

崩れ落ちた半身のポケットから

カリカリ梅が落ちた

その男の体は冷たくなっていた。



自然死だった。

享年27才。

久しぶりに帰る田舎への思いが

口元にこぼれていた。



-----end------------
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

母

総文字数/261

ホラー・オカルト2ページ

表紙を見る
愛しのレイコ

総文字数/273

ファンタジー1ページ

表紙を見る
裸の街

総文字数/12,842

ファンタジー27ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop