腹黒教師の甘い策略
「……思わず教えてもらっちゃった。」
職員室を出てすぐの保健室に戻り、一人まじまじと携帯に表示された連絡先を見つめる。
20分前、職員室で次号の保険だよりを作りながらも、落ち着かない様子の私を見るに見かねたのか、安野先生は自分の携帯を取り出して、
にっこりと笑った。
今度の笑顔は可愛らしいものじゃなく、どこか谷崎を彷彿とさせるような悪魔の微笑み。
「私、谷崎先生の番号、持ってますよ。」
「……えっ。」
そう言って机の上に置いていた私の携帯を取り、なにやら文字を打ち込む安野先生。
……これはもしかしなくても、
「はい。登録完了!」
「ちょ、ちょっと!?」
昔から悪い勘ばかりよく当たる。
案の定、私の嫌な予感は的中し、安野先生から返ってきた携帯には、しっかり、はっきり、電話帳のた行の欄に谷崎幸人と、登録されていた。
“感謝してくださいね。”とでも言いたげに笑う安野先生を、嫌いになりそうになった。
感謝どころか、今すぐ携帯をあなたに投げつけたいんですけど!
不機嫌な私の心中を知ってか知らずか、安野先生は楽しそうに笑いながら、何事もなかったかのように、またパソコンに向かった。
……天使の皮を被った小悪魔、恐るべし。
て言うか小悪魔どころじゃない。
悪魔よ、悪魔!