腹黒教師の甘い策略
……とりあえず、林檎剥いたら、もう帰ろう。あんまり長居しすぎると、谷崎もゆっくり休めないかもしれないし。
そう思い立って、林檎を剥こうと立ち上がったとき、強い力で腕を引かれて、バランスを崩し、私の顔が谷崎の顔に覆い被さるような形になった。
「……た、谷崎?」
恐る恐る声をかけると、谷崎はゆっくりと目を開ける。
……突然どうしたんだろう。寝ぼけてるの?
「たに……っ、」
不思議に思ってもう一度名前を呼ぼうとした瞬間、遮るように口を覆われた。
……谷崎の唇で。
「たに、ざき……っ、やめ、て!」
必死に抵抗してみても、谷崎はいっこうに離れてくれない。
……なんで、なんでこんなことするの。
寝ぼけてるの?それとも、意識があって、
わかってやってるの?
やめて、そんなキスされたら、今、こんな中途半端な気持ちのままで、そんなことされたら……
戸惑いと、苦しさで混乱している私をよそに、谷崎の舌は相変わらず追い詰めてくる。
逃げながら、谷崎の胸押すと、谷崎はようやく離れて、口を開いた。
「……好きだ、有沢。
7年前から、ずっと。」
小さな声で、でも、ゆっくりとはっきりと、谷崎は言った。