腹黒教師の甘い策略


「ヨーグルトとかだったら食べやすいかな、と思って買ってきたの。冷蔵庫に入れてくるね。お邪魔します。」

「あっ、おい!ちょっと待て!」


制止する谷崎の声と同時に聞こえてくる足音。その音はだんだんと近づいてくる。

どうしよう、入ってくる……!

……いやいや、別に慌てることない。
入ってきた瞬間に出ていけばいい。うん、そうしよう。


足音に合わせて早くなる鼓動を押さえつけるように胸に手を当ててその時を待つ。

「お邪魔します。
……あっ、こんにちは。」

「……こんにちは。
あの出ていくのでどうぞお構い無く。」


リビングに入ってきたショートカットのよく似合う女性の目も見ずに、通りすぎて玄関に向かう。そこまではうまくいったのに、靴を履こうとした瞬間そこにいた谷崎としっかり目があってしまった。


……気まずい。早く出よう。
さっきのキスも、あの女の人のことも気になるけど、結局私は谷崎にとって、浮気相手で、暇潰しのおもちゃでしかない。それ以上でも以下でもない。
……干渉しすぎた。少しのつもりだったのに、
少し谷崎見ただけだったのに、途中から聖司のことなんてもうどうでもよくなった。
心が全部谷崎を見てた。
……でも、谷崎はそうじゃない。

< 41 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop