腹黒教師の甘い策略
「……別れたいの。」
息を吐くように言った私に、電話越しの聖司が息を飲んだ音が聞こえた。
「……本気なの?」
「うん。本気。」
聖司と話したら、文句のひとつでも言ってやろうと思ってたのに、なぜか怒りなんて込み上げてこなかった。悔しいけどこれもあいつが原因……な気がする。
力強い私の言葉に、少しの沈黙のあと「そう、わかった。今までありがとう。」と聖司が言ったところで、私は電話を切った。その後になにか言いかけてたきがしたけど、もうそんなことどうだっていいや。
「……何て言ってた?」
「わかった。今までありがとうって。」
「はい?なにそのあっさりした返し。むかつく。」
そう言ってイライラした様子で枝豆を食べる香織。
……なんか、香織が私以上に怒ってくれたからか、不思議とあんまり、悲しくない。それと、聖司以上に、私のほうがもう冷めてたんだろうな。
そう妙に納得して、香織のペースに追い付こうと私も枝豆に手を伸ばした。
「そうそう。私も悠姫に言いたいことがあったの。」
「言いたいこと?」
お互い何事もなかったかのように枝豆を味わっていると、香織が思い出したかのようにそう言って、今度は自分の携帯を取り出した。