腹黒教師の甘い策略


「……居たのよ。その合コンに谷崎も。」

「……えっ?」

「もうずいぶん前のことだったし、私も忘れてたんだけど、前にあんたから谷崎さんの話を聞いて思い出したの。そのとき一緒に行ったべつの女の子から谷崎さんの連絡先送られてきたこととか。」


……嘘。
あのとき谷崎があそこにいたなんて……、ありえない、だって……

ぐちゃぐちゃになった頭のなかで、そこまで考えたとき、思い出した。

……仕事終わりにご飯に行った時、トマトチューハイを頼んだ私に谷崎は“まだ好きなんだな”って言って笑った。
聖司に会って、泣いてしまった私を慰めてくれたとき、谷崎に抱きしめられて、どうしてかわからないけど懐かしさを感じた。そのとき、谷崎は私を抱きしめながら、私がつけていた白いバレッタをしきりに触っていた。愛しそうに。
そのときの合コンでも、あのバレッタつけていった気がする。

……さっき、谷崎の家でキスされて言われた“好きだ。7年前からずっと”っていうのは……


「……そんな、なんで、なんで、言ってくれなかったの……」

「ごめん!言うタイミング逃しちゃって……」

「違う!」


なんで、言ってくれなかったの。……谷崎どうして?

「悠姫?!」


香織の呼び止める声も聞こえないふりをして、私は慌てて店を出た。向かう先なんて決まってる。


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