腹黒教師の甘い策略


「……有沢、好きだ。もう誰にも渡さない。」

何度も何度も、優しくそう囁きながら、キスをする谷崎。キスをするとき眼鏡をしてると邪魔だから、と言って少し前に外された眼鏡。普段は眼鏡越しでしか見ることができない目を見ないのはもったいない気もするけど、キスをしているときに目を開けるなんて恥ずかしくてできない。
私はただふってくるキスを目を閉じて受け止める。

……谷崎も、ドキドキしてる。私と同じぐらい、ううん、私より鼓動が速くなってる。

キスされている間、手の置き場所に困って、ふと、谷崎の胸に手を当ててみる。ドキドキと高鳴る鼓動を感じて、谷崎もドキドキしてくれているんだとなんだか嬉しくなった。


「……あんまり俺を煽るなって言ってるだろ。そんなことされて、そんな顔のお前見て抑えられるほど、できた男じゃないんだよ。
……お前今なにされても文句言えないからな」

そう言って熱を帯びた視線で私を捉えて、私の手を掴んだ谷崎。もうこれ以上されたら、心臓が止まる。そんなことを考えながら、それでもやられっぱなしは悔しくて、今度は私から唇にキスをした。

「……谷崎、好き。
ずっとそばにいて。」

そう言った私を見て、一瞬驚いた顔をしたあと、谷崎の頬は赤く染まっていった。照れてるの?と聞くと素直じゃないこの男は、「ちょっと熱があるだけだ。」と言って顔を背けた。そんなひとつひとつの全てが愛しい。

私はそんなことを思いながら、強く抱きしめられた谷崎の腕のなかで、谷崎の控えめな香水のにおいを胸いっぱいに吸い込んで、鼓動と体温を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。







end
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