もう、きっと君と恋は始まっていた
『………え?』
私が首を傾げ、聞き返すと。
由樹君は、また困ったように笑って。
『知佳、俺、奈々のこと、きっと今でも好きなんだと思う』
でも、静かに、静かに、私にだけ、そう、告白をしてくれたんだ。
『……そっか。
由樹君と私はいつも結ばればないんだね』
私が笑って、そう言うと、由樹君も笑った。
『知佳、お前は崇人の幸せを願ってる、そう言ったよな?
俺もそうだよ、けどさ…せめて気持ちだけはちゃんと言わないか?』
…由樹君…?
『俺、思ったんだ…。
恋の終わりは、相手にちゃんと言ってもらわないと終われないって。
その恋を終えることができた時、その相手の幸せをちゃんと願えるんじゃないのかな、とか。
だから、俺は奈々に、知佳は崇人に、ちゃんとぶつけよう?』
由樹君の考えは胸に響いた。
きっと、そう。
由樹君の言う通り、相手に伝えて、相手に返事をしてもらって、そこで初めて恋の決断を下すことができるんだと、私もそう思う。
『由樹君、実はね?
奈々は今日、崇人に告白するつもりなんだ…。
きっと崇人も奈々の告白を受け入れる。
だから…由樹君も私も最終日の日に言おう?』
『……知佳…』
『奈々も崇人も両想いで、きっとお互いの好きを待ってる。
だから由樹君と私の好きを聞いたら、二人は困ってしまうかもしれない…。
最終日、二人がきちんと、お互いの好きを確認して、付き合うことになったら、そうしたら笑って、“実は好きだったんだよ”って、そう言おう?』
『………分かった、そうしよう』
由樹君は、私の提案を受け入れてくれた。
もしかしたら、由樹君は奈々の恋を邪魔したかったのかもしれない。
でも。
それでも。
私はバカだから。
どんなに苦しくても。
どんなに悲しくても。
どんなに辛くても。
どんなに泣くことになっても。
それでも、私は崇人の幸せそうな顔を見たい。
だから、由樹君、ごめんね。
こんな提案をしてしまって。