ずっと隣で・・・
「なるほどね・・・・」
弦はテーブルの上のコーヒーを飲むと
「実はさ、須田さん、結婚を約束してた人がいたんだよ。
同じ会社で俺の一つ年上の
 江里子さん。うちの経理やってたんだよね~~。付き合いもすっごく長くてさ
ほぼ夫婦って感じでね。俺あの2人を見てもう一度千鶴とやり直したいって
思ったんだ。だけど・・・須田さんってさ~~。自由人って言うか・・・
急に北欧行っちゃったり、何日も工房にこもったりするんだよね。」
「確かに自由人って感じするね」
「だろ?その日も急に須田さん海外に行くって言いだして、仕事を俺らに
任せて行っちゃったんだよ。それは別に大したことはないんだけど・・・」
「何か起こった?」
「江里子さん、須田さんを空港まで送ったかえりに交通事故に合っちゃって」
「え?!っじゃあ・・・もしかして・・その・・・」
「嫌・・・生きてる。生きてるんだけど・・・・ダメだったんだよ」
弦の言ってる事がわからず首をかしげると
「江里子さん・・・妊娠してたんだよ・・・」
そこでダメだったって言葉の意味を理解した。
「それで?・・・どうして別れたの?」
「須田さんがその事を知ったのは北欧から帰って来た時でね・・・
 心配かけたくなくて黙ってた江里子さんと、すぐに教えてくれなかった事に
怒った須田さんが大喧嘩。売り言葉に買い言葉・・・それで江里子さんでてっちゃったんだよ」
「それ・・いつの話?」
「半年くらい前かな・・・・」
「でもまだ2人は愛し合ってるんだよね」
「多分」
私は大きく息を吐くと
「好きなのに別れるとか信じられない!どうせごめんねが言えないだけなのよね」
弦は何かバツの悪そうな顔を見せた。
「な・・何よ。私間違ってる?」
「いや・・・好きなのに別れるとか信じられないって・・・俺らもそうだったんじゃないの?って思ってね」
「あああ!!ん~~。確かにそうだけど・・・けど今は戻るべき場所に戻ってきたわけだし
 私たちの事はもういいの。それよりも須田さんと江里子さんの事よ。」
私は膝の上の結婚情報誌を閉じると
「明日。京都に行こう!」
「はぁ?」
「江里子さんに会う。会って須田さんと仲直りしてもらう」
「お前・・・いきなり何言うんだよ。正気か?」
「正気だよ。っていうか仲直りするまで式は挙げない」
自分でもよくわからなかったが他人事とは思えなかった。
ただあんなに素敵なものを作れる人が幸せだったらもっと
素敵なものが作れる。
あんな寂しそうな須田さんを見たくないと思ったから・・・・
そう思ったらいてもたってもいられなくなった。

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