ずっと隣で・・・
そんなことを考えていたらドンとおでこが何かに当たった
「いった・・・」
「おい・・どこ見てんだよ。手繋いでいてぶつかるとか・・・
相変わらずおっちょこちょいだな」
信号が赤だったようで止まったことに気がつかなかった私は
弦の腕におでこが思いっきり当たっていた。
決して痛くはないけれど
手を繋いでいることに何の疑問を持っていないような言い方の弦にムカついた。

「手を繋いでるからぶつかったのよ。」
「はぁ?」
「友達なのに・・弦が・・当たり前の様に手を繋ぐから・・・だから」
「あ・・・ご・・ごめん。」
「勘違いするじゃない。・・・こんなことされたら・・・」
げっ!また・・口に出さなくてもいいことまで言ってしまった。
ますます顔を上げられなくなる。
でも弦は手を離さなかった。
「勘違いって?」
ほら・・・また私に質問する。
「な・・・なんでもない・・・なんでもないって」
私は繋いだ手を離そうとした。
だがそれ以上の力で弦は手を離してくれなかった。
「離してよ。私たち・・友達なんでしょ?」
「・・・・・」
弦は無言のまま手をより強く握った。
「なんで?何で離してくれないの?さっき居酒屋で
友達だって言ったじゃない」
あー嫌だ自分が嫌。
結局私って・・・自分で友達だって言うのはよくても
弦に友達って言われたのが凄くショックだったんだ。

何だかそんな自分がとても醜く感じて涙が出そうになる。
何でこんな時にうるうるしちゃうんだよ。
これってまるで私が弦の事凄く好きみたいじゃん。
弦が私の顔を覗き込んだ。
「弦・・・」
「俺は千鶴のこと友達だなんて思ってない。千鶴が友達だっていうから
話を合わせていただけだよ・・・俺はずっと・・・お前の事を・・・」
その時だった
「千鶴?」
弦の言葉をさえぎる様に聞きなれた声が聞こえた。
振り向くとそこには
一番会いたくない人が立っていた。

「英斗・・・・」
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