ずっと隣で・・・
それはシルバーのデザインリングだった。
このリングは昔付き合ってた頃弦がプレゼントしてくれたものだったが
別れる時に返したものだった。
「ずっと捨てられなくて・・・持ってたんだ。女々しいと思うかもしれないけど
俺の夢は、これをもう一度千鶴の指にはめることだったから」
「弦・・・」
思った以上にロマンチストだった弦に驚いたものの
それ以上に私のことをずっと思っていてくれてた事の方が大きくて
胸の奥が締め付けられた。
「しばらく会えなくなっちゃうけど、これを俺だと思ってよ」
私はリングを握り締めて何度も頷いた。

「はめてあげるよ・・・指出して」
弦が私の右の薬指にかつて私の物だったリングをはめてくれた。
「ふふ・・・よかったな。はまって・・・太って入らなかったらどうしようかと
思ったけどね」
笑いながら嫌みを言う弦に、私は口を膨らませて怒った。
するとパシャっとシャッターの音が聞こえて動きを止めた。

「おお~~いい写真撮れた。これ・・俺の待受けにしよ」
なんと凄いぶちゃいくな顔を撮られてしまった。

「ちょ・・ちょっと・・やめてよ~~。もうなんでそんな写真撮るのよ」
背伸びをして弦の写真を取ろうとするが身長差で取れない。
弦はスマホを上にあげながら
「すました顔より…こういう顔の方が何となく千鶴を近くに感じるからさ・・・」
弦の一言で私は弦のスマホを取るのをやめた。
< 79 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop