キミじゃなきゃダメなんだ
「えと、すいません、いきなり声かけちゃって」
「え?ああ、別にいいよ。諒とはいつでも話せるし」
汐見先輩は特に気にしてないみたいだ。
グラウンドでは他の学年の競技が始まって、また騒がしくなった。
「そ、そうですか。よかったー」
アハハと軽く笑ったそのとき、近くから女子の話し声が聞こえてきた。
「また汐見くんといるよ、あの一年」
「二年に水かけられたらしいのに、よく懲りずに話しかけられるよね」
「かけられたって気づいてないんじゃないの?ほら、なんか鈍感そうじゃん」
「言っちゃダメだって」
クスクス.....わざとらしい笑い声が耳に入ってくる。
周りは騒がしいはずなのに、こういう声ってどうしてか聞こえてくるんだよな。
先輩を見ると、険しい顔で女子達の方を睨んでいた。
それを見ていると、なんだか気分が落ち着いてくるから不思議だ。
.....先輩はほんと、優しい。
「気にしなくていいですよ」
そう言うと、先輩はちょっと不服そうな顔で私を見る。