I先輩
「今起こっていることは、一也が勝手にしていることなのか、それともカズくんが望んでしていることなのか、私にはわからないわ。だから…」
理事長は、わたしの目の前に一枚の紙を差し出した。
これは…地図?
「あなたが行って、確かめてみなさい」
先輩の家の、地図
「お母さん…!」
「あなたにお母さんと呼ばれる筋合いはないわ!!」
「理事長!わたし、理事長はもっと悪い人なんだって思ってました」
「まぁ、失礼な人ね」
理事長は、ゆっくりとまたイスに座り直した。
「でも、全然違いました!
やっぱり、カズ先輩のお母さんはカズ先輩と同じくらい、素敵な人なんだってわかりました」
わたしは笑って一度頭を下げると、扉を押した。
「ありがとうございました!」
パタンと静かに音を立てて、大きな扉が閉まった。
「…ちゃんと、捕まえときなさいよ?」