君が居た頃。

今日からやっと抗がん剤治療が
始められると知って、
俺はいつもより早く病院へ
足を運んだ。

「季織!」

勢いよく病室の扉を開ると、
季織は驚いた顔になり、
しだいにクスクス笑いだした。

「走ったの?」

「へへ、今日からやっと抗がん剤
使えるって聞いたから………
良かった、体調改善したんだ?」

「私的には、
前から元気だったんだけどね?
そんなことより、湊魅は大丈夫?」

「へ?」

「そんな走って……」

喘息の心配してくれてんのかな?

「大丈夫だって。慣れっこだし、
最近はもう全然?」

そう笑ってみせると、
季織は安心してくれたみたいだ。
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