残念御曹司の恋
「仕事忙しいなら、無理しないで。」
「可愛い恋人に会う為なら、喜んで無理したいんだけど。」
「無理して仕事に差し支えたりしたら、困るのは竣だけじゃないんだから。ちゃんと自分の立場分かってる?」
司紗は、目をつり上げて俺を問いつめる。
せっかく一週間ぶりに会ったというのに、難しい顔をして甘い空気に水を差す。
片桐司紗という女は、基本的には真面目な優等生だ。
何事にもきっちりした性格で、正義感があって、間違っている事は許せない。
相手が誰であっても、物怖じせずに意見を言う。
人によっては彼女のことを、お堅いとか、性格がキツいとか言って敬遠する奴もいる。
だけど、俺は司紗のそういうところが好きだ。
あっけらかんと言いたいことを言う、彼女の強さが好きだ。
それは、出会った頃から変わらない。
「怒った司紗も、かわいい。」
「ちょっと、真面目に言ってるの。」
「俺も、大真面目だよ。」
俺はネクタイを緩めながら、呆れ顔の司紗に近づいて、背後から思いっきり抱きしめた。
「こうしてるのが、一番俺の充電になるんだけど。」
彼女のうなじにキスを落とすと、わずかに彼女が身を捩る。
「ちょっと、竣…」
彼女が困惑した声で俺の名前を呼ぶ。
その声が、一週間以上禁欲していた俺を必要以上に煽った。
「ご飯より、風呂より、先に司紗がいい。」
「やっ…」
彼女を抱え上げて近くのソファに横たえる。逃がさないように彼女の上に覆い被さると、これ以上抵抗出来ないようにキスで唇を塞いだ。