彼があたしを抱くとき
母があたしに十分愛情を持っているのはよくわかっていた。
生活の様々な場面で、あたしを助け救ってくれた。
いつだったか、近所の老年の婦人から、
「女のくせに高校だの、大学だのに行くなどといわずにお母さんを楽にさせてあげなさい。
女が勉強してどうするの。あんたは頭がいいんだから、お母さんのこと考えておやり」
と諭され、
「父親もいないのに、大学へ行こうなんて思わないのよ」と言われたくやしさに、半ばベソをかいて帰ると、
「お母さんだってやりたかったことがあるのよ、でもね、女だからっていわれた。
だから、あんたには、その分思ったことやってもらいたいの、他人なんか、なんの責任もないし、勝手なこと言うんだから」