初恋の味。
君の言葉、あたしの言葉



「えっと…好き……だから、付き合って欲しい…」


放課後の教室で告げられた言葉
17年間一度も色恋沙汰がなかったあたし
上野 結歌(うえの ゆいか)は
驚いて言葉も出せない

初めての経験に胸がドキドキ鳴ってて
どうしたらいいのかわからない


「あ…えっ……恋愛的な意味での好きって
どんな感じなのかよくわからないんだけど…
それでもいいなら…お願いします?」


あぁぁぁ……意味わかんないこと言ってしまった

あたしの言葉を聞いた彼は嬉しそうに、そして
照れくさそうに微笑んだ


「うん…わからなくていいよ?お願いします」


晴れて、あたしの彼氏となった彼は
吉野 遥斗(よしの はると)

隣のクラスで、共通の友達がきっかけで1年の時から
仲が良かった
休み時間にもよく話すし、帰りも一緒だったりした

でもまさか、好かれてるとは思いもしなかった

脳内をどうにか整理しようとしていると


「と…とりあえず…帰ろっか?」


と、言われ一緒に帰ることになった
帰り道はドキドキして顔が見れなくて

家に着いてベッドに飛び込んだら携帯が鳴った



<「告白、OKしてくれてありがとう
今日から改めてよろしくね(*^^*)」



遥斗からのメッセージだった

遥斗は見た目チャラい感じなのに中身がわりと
可愛い系男子
肉食系の見た目を持った草食系男子、みたいな?



>「こちらこそよろしく
急だったからびっくりしたよ(笑)」



返事を打って、天井を見上げる

カップルってなにするんだろ…………
恋愛経験のないあたしにはわかるわけがなかった

手をつないで帰るとか…デートとか、キスとか?
そのくらいしか思い浮かばなかった

目を閉じて遥斗とのデートを思い浮かべた

手をつないで、ぎゅって抱きしめられて
キスをして……って!!恥ずかしすぎるでしょ!!

あたしの脳内バカなの!?

……でも、考えてみると


「嫌じゃない……なぁ…」


ぽつりとつぶやいた瞬間に携帯が鳴った
この着信音……電話!?


「もしもし…?」


「あ、もしもし、結歌?」


電話の主は遥斗だった


「え?遥斗?どうしたの?」


用もなく電話をしてくるような人じゃないって
思ってるから出た一言だった


「いや…声……聞きたくて」


気のせいかな?声震えてる?


「遥斗…声震えてるよ?」


「あ……え!?そ、そんなことないよ……」


なんか、可愛い……


「あははははっ!震えてるって!笑
めっちゃ声震えてるよ?緊張してんのー?笑」


「なっ…そ、そんな笑わないでよ……」


「いやいや、あははははっ!ごめんごめん!笑
初めてじゃないくせに可愛いなぁー、笑」


「男の子に可愛いはどうかと思うよ…」


遥斗には、可愛いって言葉が似合ってるって
そう言おうとしたけど、可哀相だからやめとこ


「あ、そーだ遥斗!あたし思ったんだけどさ?」


さっき考えてたことを言ってみることにした


「ん?なに?」


「恋愛的な意味での好きじゃなかったらさ?
手をつなぐとか、ぎゅーってするのとか
嫌だよね?男友達と手つないで帰るとか
考えたら嫌なんだよね」


「ん…?」


遥斗は意味が分からなさそうな声を出した


「だからね?
遥斗とするって考えたら嫌じゃなかった
だから、これってそーゆー好きなんじゃ
ないかなって思ったの」


「確かに……そうかもしれないね」


「だから、あたし遥斗のこと……好き…だよ?」


好きって言葉言うのは恥ずかしかったけど
不思議と暖かい気持ちだ


「え……!?あ、うん!!嬉しい、ありがとう」


ありがとう、って言った遥斗はたぶん今、
笑ってる
根拠はないけど、そんな気がした



仲良かった2人が、「好き」の2文字だけで
この言葉だけで違う関係になれる


遥斗の言葉とあたしの言葉が重なった
恥ずかしいのに暖かい、そんな不思議な感覚だった
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