泣いて、笑って強くなれ



「昔のお前はどこにいったんだ?

優愛」


「……っ!」


自分の顔が歪んだのがわかった。

昔の私?

そんなの……


「覚えて、ないんだもん……」


そう、昔の記憶は私にはない。


「陽向と遊んだことは覚えてる。だけど……

ここで過ごした日々はよく覚えてないの」


ずっとずっと不思議だった。

私にはある部分の記憶が抜けている。


「……ああ、知ってる。

だけど、優愛。その記憶がなくとも、お前は正しい道をちゃんと知っている」


そういって、陽向はやっと、やっと私に優しく笑いかけた。

そして、そっと私の頭を撫でる。


「たまには休めよ」


そういって、陽向は私をそっと抱き寄せた。


自然と涙が溢れた。

きっと、陽向は知ってたんだ。

私が向こうでうまくいってなかったこと。

苦しんでいたこと。

仮面をかぶって暮らしていたこと。

全部全部、陽向にはお見通しだったんだ。


「一人じゃねぇからな」


陽向の優しい声が聞こえる。


「ここにはばあちゃんもいる。俺もいる。

苦しかったらいつでも逃げてくればいい」


ねぇ、陽向。

なんで、あなたはそんなに優しいの?

なんで、私のほしい言葉がわかるの?

不思議だね。

陽向のここはどこよりも安心するよ。

どこよりも暖かいよ_________。
















< 28 / 115 >

この作品をシェア

pagetop