極甘上司に愛されてます
悪いものは全部飛んでく……か。そんなに単純なものなのかな?
ふと気を抜いただけで脳裏に蘇る昨日の悪夢のような出来事が、笑っているだけでどこかに行ってくれるとは思えない。
……でも。
「……そうだといいな」
編集長の言葉を信じて、今日一日を楽しんでみるのもいいのかもしれない。
こんなカッコいい年上の男性にエスコートされて遊園地を周れるなんて、なかなかないことだろうし。
そんなことを思っていると、徐々に列が進んで行き、いつの間にか自分たちの順番が近づいてきた。
走り抜けるコースターがゴオッと鳴る音や水に落ちる瞬間の絶叫がより近くに聞こえてきて、私は急に我に返る。
「……け、結構怖そうですね」
「今頃気づいたか。落下するときの速度は、この遊園地内でコレが一番らしいぞ」
「え」
ど、どうしよう~! 今さら列を逆走して逃げるなんてこと、できないよね……
「お客様、二名様ですか?」
そうこうしている間にあっさり乗り場に到着してしまい、私はもはやまな板の上の鯉。
「もし私が死んだら骨を拾ってくださいね……」
「大げさだっつーの。じゃあこの手は繋いだままにしとけ。俺がこの世に引き留めといてやるから」
「お、お願いします……」
シートに座ってお腹のところにバーが降ろされると、私はかなり力んで編集長の手を握った。
たぶん、いや絶対に痛いはずなのに何も言わない編集長は、やっぱり優しい。