極甘上司に愛されてます
「え?呼んでないけど……っていうかいつの間にかワイルドイケメンと抜け駆けしてる裏切り者のお姉ちゃんに用はないですよーだ」
「え? ちょっと佳子、それは誤解――」
「はい次! 三番が王様の手をぎゅー!」
……だめだ、私の声は届かない。
すごすごと自分の席に戻ってぬるくなったお酒に口をつけ、さっきの渡部くんと和田さんのことを思い出す。
ウチの新人……って言ってたから、仕事関係でここに来たんだよね、きっと。
優しい渡部くんのことだ。和田さんの職場での悩みでも聞いてあげるのかもしれない。
それにしても、怖かったなぁ和田さん。パッと見すごく可愛い人っていう印象だったのに、あんなに睨まれたらそれが台無しって言うか……
そんなことを思っていると、編集長も部屋に戻ってきて、さっきと同じく私の向かい側の席に腰を下ろす。
微妙に遅かったけど、トイレにでも寄ってきたのかな。
「……あれが、お前の彼氏か」
静かに聞かれて、私は素直にうなずく。
「そうです。なんか恥ずかしいですね、上司に恋人見られるって」
はにかむ私を一瞥すると、編集長は泡のなくなったビールを全部飲みほしてから、まじめな顔になって言う。
「……アイツ、浮気してんぞ」