極甘上司に愛されてます


「……編集長」

「ん?」

「その上着、貸してください」

「上着? んなもんどうして……」


変装なんてしなくても、今の渡部くんの目が私に気付くことはないかもしれないけど……


「……自分の目で見て、ハッキリさせてきます」


きっぱり言い切ると、私の思惑に気付いたらしい編集長は、スタジャンを脱ぎ、私の肩にそっと掛けてくれた。

彼が着るとタイトに見えていたそれは、私が着ると、お父さんの服を借りた子供のようになってしまうけれど。


「……外で待ってる」


その言葉と、優しく細められた瞳。
ジャンパーから感じる編集長の香りとぬくもりに勇気をもらって、私は一人でコンビニに近付いて行った。


「いらっしゃいませー」


おそるおそる扉を押すと、遅い時間帯のコンビニらしく、レジにはやる気のない大学生風のアルバイトが一人。
雑誌コーナーには立ち読みをするサラリーマン。

その反対側に位置する化粧品の並ぶ棚の向こうから、渡部くんと和田さんがひそひそと何か囁き合っているのが聞こえる。

私はファッション雑誌を手に持つと、意識をを棚の向こうに集中させた。


「……夏子ちゃん、お菓子は?」

「いらなーい。てかセンパイ、いつまであの人に彼女ヅラさせとくんですか?」


……いきなり核心に迫る会話。

鼓動が乱れるのを感じながら、さらに耳を澄ませる。


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