俺様富豪と甘く危険な恋
「あ……」


怖くて後ずさりしてしまう。


「本田で間違いないよな?」

「はい……」


早くこの場から立ち去りたい。まだ警官と話をしている蓮から離れ、ポルシェに近づく。

ポルシェのボンネットは人の重みでへこんでいる。窓ガラスも小さな傷が何個もある。


(防弾ガラスの車だなんて、朝日奈さんはいつも狙われているの?)


ぼんやりしていると、次々と犯人を乗せたパトカーが去っていく。

蓮とダニエルが話をしながら近づいてきた。


「上手く行きましたね」

「そのために派手に動いたんだ」


(えっ……?)


ふたりの会話が聞こえて、栞南の身体が金縛りにあったように動けなくなる。


(こういうことがわかっていて……なんて人なのっ!)


車がスピンして止まり、拳銃を持った本田たちが車に近づいた時、栞南は死を覚悟した。

それが作戦だったとはなんということだろう。せめて言ってほしかった。あの恐怖といったら、ダニエルに拉致された時より怖かった。

そう考えたら、イライラしてきて震える脚で蓮に近づく。

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