俺様富豪と甘く危険な恋

お前が愛おしい

額に置かれた冷たい手の感覚に栞南はハッとして目を覚ました。

屈むようにして置かれた手の主が蓮でホッとしたが、払いのけると身体を起こし膝を抱える。

自分の着ているアルマーニのドレスワンピを見て、さっきのは夢じゃなかったと思う。


「気分はどうだ?」

「いいわけないですっ」


(香港警察に手配済みだったのなら本当に言ってくれればよかったのに。私の気持ちなんてまったく気にしていないんだ)


そのことが寂しく思う。蓮を好きだと気づいてしまったから特に。

そっぽを向いていると、ベッドの端に蓮が腰を掛け沈む。


「怖がらせてしまい申し訳なかったと思っている」

「本当にそう思っているんですか? 私をさんざん喜ばせておいて……あれは悪夢でした。ピストルを見て、もう死んでしまうんだって……それにっ! 車がスピンした時、崖から落ちちゃうって……」


あの時のことを思い出すと、安全な場所にいるのに心が不安に襲われ、涙が溢れ頬をぬらしていく。

そんな栞南の様子に蓮は胸がぐっと鷲掴みにされるような感覚に陥る。切ないような胸の痛み。生まれて初めての感覚だった。

蓮は栞南の頭を自分の胸に引き寄せた。

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