俺様富豪と甘く危険な恋
「朝日奈さん、スマホで写真撮って私の携帯に送ってください」

「断る。面倒だ」

「もうっ! 面倒って……私はこの旅行、病気でどこも行けなかったんです。写真を撮って送るくらい何でもないでしょう?」


蓮はジーンズのポケットから携帯をしぶしぶ出して栞南を撮りはじめる。

無邪気な笑顔を携帯に収められ、蓮はまんざらでもない。

ふたりは海の守り神や子宝の神の像を見ながら、赤い糸をたくさん巻かれたおじいさんの像に近づく。


「それがなんだか知っているか?」

「縁結びの神様ですよね? 触らなきゃ」


栞南は「月老之喜神」の像に一歩近づき手を伸ばそうとすると蓮に引き戻される。


「縁結びは必要ないだろ?」

「え……」


栞南は目をぱちくりさせる。


「目の前にお前を好きな男がいるのにひどい女だな」

「ぁ……」


(私を好きな男……)


「朝日奈さん……」

(この恋は今だけの気がしていた。彼は私が珍しいだけなのだと……すべてが終われば私たちはおしまいだと……そう言ってくれるのはうれしいけれど……でも、期待しちゃいけない)

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