俺様富豪と甘く危険な恋
「トニーごめんなさい。私がサングラスを取ってきてほしいと言ったばかりに……」

「いえ、私の方に考えが足りなかったんです。立てますか?」


栞南はトニーに支えられてリビングに戻った。

ダイニングルームの荒れ方を見たトニーは一瞬絶句した。


「がんばったんですね」


襲った男よりも小さい身体で抵抗するのは並大抵のことではなかっただろうと、トニーは栞南が気の毒になった。

栞南はトニーの「がんばったんですね」を聞いた瞬間、涙が出てきて頬を濡らす。

張っていた気が一気に緩んでしまったようで、栞南はへなへなとその場に座り込む。

ガラスで切った頬の傷が涙に沁みて痛い。

救急セットを持ってきたトニーは栞南をイスに座らせる。

それから脱脂綿にしみ込ませた消毒液を栞南の右側の頬にあてた。

涙よりビリッとした痛みに栞南の顔がゆがむ。


「良かった。これくらいならそれほど痕に残らなさそうです」


トニーがそう言った時だった。少し離れたところで蓮の驚きの声がした。


「いったい何が!? 栞南っ!? 栞南っ!」


蓮はダイニングテーブルのイスに座る栞南に駆け寄る。

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