俺様富豪と甘く危険な恋
美味しそうに食べてくれる蓮だが、いつもより口に運ぶ量が少ない気がする。


(やっぱり口に合わないのかな……)


蓮が箸を置いた。


「栞南、すまない。少し頭痛がするんだ。残りは明日の朝に食べる」

「ずっと痛かったんですね? 顔色が悪いし」


思わず手を蓮の額に伸ばした栞南だが、すっと避けられる。避けられると思っていなかった栞南は唖然となった。

蓮は取り繕うように栞南の頬に軽く指先で触れる。


「大丈夫だよ。休ませてもらうよ。ダニエル、来てくれないか」


平静を装った蓮は寝室に足を向ける。そんな蓮の後姿を栞南は悲しそうな瞳で見送った。


「ミズノさん、ここは私が片付けますのでどうぞお休みください」


蓮の部屋のドアが閉まるのを、茫然と見ていた栞南の背後からダニエルは言う。

栞南の脇を通り抜け、ダニエルも蓮の部屋へ入って行った。

寝室に入った蓮はスーツを着たままクイーンサイズのベッドに倒れるように横になる。

その途端、脇腹の傷がものすごい痛みを訴える。鋭利なナイフは切られた瞬間より、あとの方が痛みは強烈だ。


< 152 / 369 >

この作品をシェア

pagetop