俺様富豪と甘く危険な恋
(私が彩からダイヤモンドを受け取らなければ朝日奈さんに会うことはなかったんだよね……)

そう思うと、怖い目には十分あったが、許せてしまいそうだった。

ふたりが向っているのは黄大仙廟(ウォンタイシンミュウ)。テレビなどの旅番組で必ずと言ってよいほど出るお寺だ。

栞南は返してもらったスマホでたくさんの宙に浮かぶ赤や黄色の提灯のようなものを撮ったり、干支の銅像を撮ったりと忙しい。

中国人の観光客にもめげずに写真を撮っている栞南を見て蓮は楽しい。

説明書きが読めない栞南に蓮が通訳してくれる。

ひとりで観光をしていたら、わからない部分がたくさんあっただろう。観光がスムーズにできるのも、隣にいる蓮のおかげだ。


「ここは母方の祖母がよく来る場所だったんだ。あの人たちのように座って祈り、線香を捧げていた」


蓮は何十年ぶりにここへきて懐かしい景色を思い出した。年老いた老女が膝をついて祈る姿が祖母と重なる。そしてそばに居る小さな子供を自分の幼い姿に。



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