俺様富豪と甘く危険な恋
覚悟した痛みの衝撃はなかった。


「おまえっ! あぶないだろーが! 頭、かち割られたいのか!」


栞南の身体が乱暴に起き上がらせられる。


「だって! そんなもので叩いたら壊れちゃう!」

「当たり前だ。壊さないと目的の物が取り出せない。お前はバカなのか? それともただ無鉄砲なだけなのか? 死んで後悔する前に、これからはよく考えてから行動しろ」

「この中に目的の物が入っている?」


(誘拐しておいて説教するなんて!)


「ああ。今度は邪魔するなよ。これに当たったら脳みそが出てくるからな?」

蓮は栞南の目の前で、金づちを見せつける。

念を押した蓮だが、それでも栞南を信用できないらしい。

ダニエルに向かって蓮は顎をしゃくると、栞南はひょいっと抱き上げられて少し離れたところに立たされた。

ソファの後ろ側に移動させられた栞南は、仕方なく蓮の一連の動作を見守る。

蓮は素早く金づちを振り下ろすと、タオルの下の翡翠が鈍い音をたてた。

めくったタオルの下にあるのは大小さまざまな形に砕かれた翡翠と、ブルー色した人差し指の爪より大きい光り輝く宝石のようなものがあった。

栞南の口から「あっ!」と驚く声が漏れる。

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