俺様富豪と甘く危険な恋
「栞南? どうしたの?」


一緒に喜んでくれない栞南の身体を離すと、優香は顔をじっと見る。


「ぁああっ……う……も……ぅ……だめ……」


頼る腕がなくなった栞南はその場にしゃがみ込み、子供のように泣きじゃくる。


「栞南? いったいどうしたの? ねえ、栞南?」


優香は親友の様子に驚き、その場にしゃがむと、泣きじゃくる栞南の肩をゆする。


「なにがだめなの?」


優香は栞南を立たせると支えながら部屋に入り、キッチンスツールに座らせる。号泣と言う言葉がぴったりな栞南の顔にティッシュをあてる優香の顔は眉を寄せ困った顔だ。


「どうしたの? 泣いているばかりじゃわからないよ。話してくれないと」

「うっく……ゆぅ……ううっ……」


しばらく言葉にならない栞南だった。ようやく話ができるようになったのはずいぶん経ってから。


「……ごめんね……帰国したばかりなのに……」

「ううん。栞南のこんな姿見るの、初めてだったからびっくりしたけど。なにがあったの?」


オーストラリアで日に焼けた小麦色の顔は心配げだ。

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