俺様富豪と甘く危険な恋
「栞南、まったく涙もろいんだからっ。私は飛行機の中で吹っ切ったからね。栞南もそんなひどい男なんて早く吹っ切るんだよ」


栞南はラーメンを口にしながら、涙を拭こうと目をこする。


(私はそんなに簡単に吹っ切れないよ……まだ期待してしまっている自分がいる……)


「マカロニサラダ、美味しいよ。栞南が作ったマカロニサラダ、向こうで食べたかったんだ」


ラーメンとマカロニサラダを頬張る優香は吹っ切れたと言うが、空元気に見える。


「どんな人だった?」


美人なのに今まで恋人がいなかった優香が好きになった人が、どんな人だったのか知りたくて栞南は聞いていた。


「オーストラリアの人で、私がアルバイトをしたカフェの店長だったの。めちゃくちゃ背が高くて、マッチョで、イケメンだったよ。年は35歳で。独身だと思っていたんだけど、何度も寝た後に奥さんがいたことがわかってさ。それでジ・エンド」


優香は明るく、いかにも気にしていないような口調で栞南に話す。


(優香、聞いている方がツラいよ……私はまだ泣かないで話すことなんてできない。すぐにそうやって言えるようになるのかな……)


やっぱり食欲がわかない栞南だった。

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