俺様富豪と甘く危険な恋

別れの電話

いつもと変わらない生活が始まった。優香はもうオーストラリアには戻らないようで、就職活動をすると張り切っている。

栞南は蓮のことが忘れられず、連絡があるのをひたすら待っていた。だが、音沙汰がない日々が続き1ヶ月もすると、しだいにあの出来事は夢だったのだと自分に言い聞かせるようになっていた。


そんな金曜日の夜。

スーパーで食材を買って帰宅し、親子丼の簡単な夕食を作り終えてイスに座って食べ始める。

まだ優香は帰ってきておらず、ひとり寂しい夕食だ。

会社の同僚や先輩たちに食事や飲みに誘われれば行くこともあるが、蓮のことで沈んでいる栞南はにぎやかなみんなの輪に入っていけなかった。

今もまだ栞南の頭の中は蓮で埋め尽くされている。

静かな部屋が苦痛でテレビを点けた。だが、すぐに点けなければ良かったと後悔した。

聞こえてきたのは「きれーい」という言葉で、顔をテレビに向けてみると、芸能人が案内する香港ツアーの番組だった。

ヴィクトリア・ハーバーの夜景を見ると、ペニンシュラホテルで蓮が栞南の誕生日をお祝いしてくれた時のことを思い出してしまう。美しい夜景はまだ鮮明に脳裏に焼き付いている。



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