俺様富豪と甘く危険な恋
栞南は急になまりでもついてしまったかのように重くなった足を動かし、示されたソファにまるで機械仕掛けの人形のように腰を下ろした。


「金をかけてわざわざ別れに来るとはな」


冷たい声が部屋に響く。最初に出会った頃の蓮のようだ。


「メ、メールで会いたいと言ってくれたのに、どうして急に心変わりをしたのか知りたかったの」


取り付く島もない蓮に、がんばって落ち着こうとしていた栞南の第一声は上ずってしまった。


「好きな女が出来たんだ」


栞南は泣きださないように大きく呼吸をする。


『好きな女が出来たんだ』


(そう言われるのはわかりきっていたこと。こんなことを言われに、ここまで来てしまった。私ってなんてバカなんだろう……会えば抱きしめてやっぱり好きだと言われると心のどこかで思っていた……)


それでも……冷たい態度をされても蓮を好きな気持ちは変わらない。

栞南は最後に蓮の姿を目に焼き付けておこうと見つめた。


(頬が少し……痩せた?)


そこへダニエルがコーヒーを運んできた。蓮の分はなく、栞南の前にカップが置かれる。

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